土地狂いの備忘録

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クジラと共に生きる町

魚津水族館のことを書いたから、くじらの博物館もやるか!

2年前に初めて行ったんですが、去年また行ったくらいには好きな施設です。早く記事書いとけよ。

 

博物館という名前ではありますが、敷地内には水族館もありクジラやイルカのショーもやってます。

そしてこの博物館は海のすぐそばにあるんですが、天然の入り江に飼育されてるクジラが泳いでます。

クジラのショーもこの入り江で行われてます。

いかにもクジラって見た目のクジラを見るのはここが初めてだったと思うんですが、イルカとはまた違う魅力がありますね。身体の大きさを生かした迫力のあるジャンプも良かった。特にオキゴンドウの細長い顔つき何か良くないですか?

ちなみに入り江にはショーエリア以外にふれあい体験ができる場所もあるんですが...

ちっっっっっっっか

入り江を仕切ったプールにいるクジラやイルカにエサやり体験ができるんですが、とにかく距離が近い。スタッフさんから触らないでねと説明されるけど、手を伸ばせば簡単に触れてしまう距離なんですよ。客の良心を信頼しすぎじゃないですか!?しかもふれあいエリア周辺には必ずスタッフさんがいる訳ではないらしく、私とクジラ達しかいない時間もあった。ありがたいけどこのシステムでよく続いてるな。昔はこの入り江にシャチいたってマジ?

この距離だと入り江の真ん中で立っているという状況もあって、生き物と対峙してる生々しさがすごい。人によっては結構怖いかもしれない。クジラのよく見ると怖い目が私は好きなので、じっくり観察できてとても良い時間を過ごせました。あんまりぼーっとしてるとエサの魚をトンビに強奪されそうになったり、イルカの戯れで水しぶきが飛んでくるから注意してね。

そして水族館も他では見ないイルカやクジラばかりでなかなか面白いです。

水族館でイルカやクジラの泳いでる姿をずっと眺めてしまいがち。面白い行動をする場合もあるので、なるべく滞在する方が楽しめると思います。私が行った時はアルビノのイルカが他の種類のイルカとイチャイチャしてたり、魚食べてるクジラにじっと見つめられたりなどした。

そんな感じで水族館として非常に楽しめる場所なんですが、博物館も是非見てほしい。

見てよこの密度。全身骨格やら捕鯨ジオラマを吊るしまくって吹き抜けがミチミチになってます。詰められるだけ詰めこみました!って感じで迫力がすごい。落ちてこないよね....?

 

博物館ではクジラの生態や捕鯨の歴史について展示されています。ここに来るまで知らなかったんですが、太地では古式捕鯨という組織的な捕鯨が盛んだったそうな。人間よりも遥かに巨大なクジラを捕獲するために、伝達から捕獲まで細かなルールが作られていて非常に統率性の高い漁業なんですよ。太地五郎作らの『日本の古式捕鯨』や吉村昭の『鯨の絵巻』なんかを読むとわかるんですけど、刃物と船だけでクジラに立ち向かう光景は壮絶です。

『日本の古式捕鯨』(太地 五郎作,中沢 新一,サイモン・ワーン):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部

吉村昭 『鯨の絵巻』 | 新潮社

網へクジラを追い込み、銛を打ちこんで弱らせるんですが、最後は刃刺と呼ばれる若者が泳いでクジラに近づき、とどめを刺しに行きます。そして身一つでクジラに取りついて噴気孔に包丁で穴を開け、そこに網を通してやっとクジラを仕留めたことになります。下手をすれば簡単に死んでしまう仕事であるため、集団が統一した行動を取ることが何より重要でした。捕鯨のシーズンは冬なんですけど、これ褌一丁で海に出てるみたいなんですよね。低体温症にならんのか?

テクノロジーを享受して呑気に生きてる現代人なので、人間が巨大なクジラに挑むための知恵や勇敢さに純粋に感動しまして、博物館に行ってからすぐに関連書籍を読み漁ることになりました。こういう人知の及ばない存在に立ち向かう人類というコンテンツが好きなんで。あたりまえだけど読んでから展示を見る方が面白かった。

あと『鯨の絵巻』はほぼ実話とは思えないドラマチックな展開で読みごたえ抜群なので、マジで読んでほしい。

 

古式捕鯨は太地以外にも存在していましたが、極彩色の捕鯨船があるのは太地特有の文化です。

「勢子船」と呼ばれる刃刺が乗る船は特に鮮やかに彩られています。当時の技術ではクジラを一撃で葬ることはできないので、クジラは血の潮を吹き、もがきながら死ぬことになります。極彩色に彩った理由として様々な説がありますが、そんなクジラに対する宗教的な意図があることは確かだと思います。

 

古式捕鯨は断絶したものの、太地町では今でも捕鯨が続けられており、クジラ料理を楽しめる店や宿泊施設もあります。そんな場所にクジラやイルカと触れ合える博物館が存在し、夏には海水浴場でクジラと泳げるイベントもあったりと太地町がクジラと共に生きる町だということがよくわかります。

現代では捕鯨にまつわる問題が色々とありますが、もっと理解を深めたいと思わせてくれたのは太地町のおかげです。古式捕鯨ゆかりの史跡もあるので、今度は町の散策もしたいですね。ホエールウォッチングもしたいし、クジラともっと触れ合いたい....